過活動膀胱について
過活動膀胱とは、膀胱が過敏になって尿をためにくく、急な尿意が起こって我慢できない、膀胱が急激に収縮して失禁するなどを起こす疾患です。最近になって広く知られるようになってきました。腎臓でつくられた尿は腎盂、尿管を通って膀胱にためられます。一定以上の量がたまると尿意が起こり膀胱の筋肉が収縮して排尿することになりますが、このプロセスで膀胱が過敏になるトラブルが生じて、症状が出ます。
過活動膀胱の症状
最大の症状は尿意切迫感です。急に尿意をもよおし、切迫性尿失禁といって我慢できずに漏れてしまうこともあります。膀胱の活動が活発になりすぎて、水音を聞く、水に触れるだけで尿意が起こることもあります。
頻尿で昼夜を問わずトイレが近くなります。夜間にも何度もトイレに起きます。排尿間隔が2時間以内の場合、過活動膀胱が疑われます。
過活動膀胱の原因
排尿のプロセスをコントロールする神経回路に障害がある神経因性過活動膀胱のケースと、明らかな神経トラブルがない非神経因性過活動膀胱のケースがあります。
脳は、膀胱や尿道と情報のやりとりを行い、膀胱にたまった尿の量などの情報を得て周辺筋肉の収縮、弛緩などをコントロールしていますが、この信号が上手く伝わらないために、尿が十分にたまっていないのに不意に尿意が起こって尿漏れや失禁を起こします。
脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発硬化症などの脊髄の障害などの後遺症として現れます。
非神経因性過活動膀胱
神経回路の障害がない過活動膀胱です。女性では、加齢や出産によって骨盤底筋群が弱くなったり傷ついたりすることで排尿メカニズムが働かなくなって、過活動膀胱になることがあります。
その他、自律神経の乱れ、膀胱の血流障害が原因で起こると考えられています。前立腺肥大による排尿障害、メタボリック症候群や生活習慣病、女性ホルモンの低下などが関係しているともいわれています。
過活動膀胱の検査
過活動膀胱を直接検査する方法はありません。したがって、診断材料は問診によって状況を詳しく伺いながら診断を下します。問診の過程で、過活動膀胱かどうかを調べる「過活動膀胱スクリーニング質問票」や、過活動膀胱の程度を調べる「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」という簡単な質問票を使用することもあります。頻尿に加えて、尿意切迫感の症状があるかどうかが診断のポイントとなります。また、腹部エコーで尿路結石・膀胱腫瘍・子宮筋腫など他に重篤な疾患が基礎疾患としてないかどうかや、尿残量を測定し正確な病状の把握に努めます。
過活動膀胱の治療
薬物療法
症状を軽減させて、患者さんのQOL(生活の質)を低下させないことが治療の基本です。効果や副作用など個人差がありますので、患者さんのライフスタイルに合わせて必要な薬を処方します。一般に、膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬やβ3受容体作動薬などを用います。治療開始前に医師から十分な説明を受け、治療方針について理解をしておくことが大切です。
行動療法
膀胱訓練、骨盤底筋体操などによって膀胱や骨盤底筋を鍛えることで過活動膀胱の症状を緩和させます。さらにカフェインやアルコール、水分の制限などの生活改善も有効です。
膀胱訓練
尿意を我慢する訓練です。最初は5分くらいからはじめ、徐々に我慢する時間を延ばしていきます。最終目標は2、3時間です。ただし、前立腺肥大症や感染症による過活動膀胱の場合にはかえって症状を悪化させることがあるため、医師の指導にしたがってください。
骨盤底筋体操
骨盤底筋群を強化する体操を行います。筋力トレーニングですから効果が出るまでに半年ほど時間がかかります。継続して運動を続けていくことが大事です。